3相2相変換(αβ変換)について
三相交流モータの制御によく出る3相2相変換(uvw-αβ変換、またはクラーク変換ともいう)とdq変換(αβ-dq変換)について、自身のよく混乱する点と、解釈をまとめてみました。
論文とか参考書などで微妙に式が違っていて混乱しやすいと思ってます。
以下のように相対変換と絶対変換(電力不変変換)があります。
相対変換
$$ i_{\alpha\beta\gamma}= \frac{2}{3}\begin{bmatrix} 1 & -\frac{1}{2} & -\frac{1}{2} \\ 0 & \frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{\sqrt{3}}{2} \\ \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} i_{u} \\ i_{v} \\ i_{w} \end{bmatrix} $$
絶対変換(電力不変変換)
$$
i_{\alpha\beta\gamma}=
\sqrt{\frac{2}{3}}\begin{bmatrix} 1 & -\frac{1}{2} & -\frac{1}{2}
\\ 0 & \frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{\sqrt{3}}{2}
\\ \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} \end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
i_{u}
\\ i_{v}
\\ i_{w}
\end{bmatrix}
$$
違うのは係数が2/3か√(2⁄3)だけですね。言い換えると、絶対変換に対して
√(2⁄3)をかけたものが相対変換になるとも言えます。
iγはuvwの中性点がずれている場合は値を持ちます。
重要な点は、相対変換は変換前後でピークが保存されていて、絶対変換は 電力が保存されている点です。これについては参考書などにしっかり記載されているので説明は省略します。混乱する点は大きさや位相に関する点だと思います。
電流については
・ 相対変換のia, ibの大きさ(ピーク)はiu, iv, iwの大きさと同じ
・ 絶対変換のia, ibの大きさはiu, iv, iwの大きさの√(3⁄2)倍
(相電流の√(3⁄2)倍なので実効値の√3倍ともいえます)
電圧についても同様ですね
・ 相対変換のva, vbの大きさ(ピーク)はvu, vv, vwの大きさと同じ
・ 絶対変換のva, vbの大きさはvu, vv, vwの大きさの√(3⁄2)倍
(相電圧の√(3⁄2)倍なので線間電圧の実効値ともいえます)
なお、上記の変換式では、基本的にはiu, iaの位相が一致するように変換してますが、
iaをivやiwと一致するように変換するようなことももちろん可能です。
(ただし位相が入れ替わるため、混乱の元)
αβ変換は以下wikipediaのページがわかりやすいです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Alpha%E2%80%93beta_transformation
dq変換
続いてdq変換です。 $$ \begin{bmatrix} i_{d} \\ i_{q} \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} \cos\theta & \sin\theta \\ -\sin\theta & \cos\theta \end{bmatrix} \begin{bmatrix} i_{\alpha} \\ i_{\beta} \end{bmatrix} $$
id, iqのベクトルの大きさを計算すると $$ \sqrt{i_{d}^2+i_{q}^2} = \sqrt{i_{\alpha}^2+i_{\beta}^2} $$ 当然ですがαβ変換、dq変換ではベクトルの大きさは変化しないです。 ただし、uvwから直接dq変換するような式を用いる場合はαβ変換における係数がかかります。 (以下wikipedia参照) https://de.wikipedia.org/wiki/D/q-Transformation
トルク式
相対変換、絶対変換どちらで式を展開しているか混乱したときは、トルク式や電力の式をみると
確認できると思います。
$$
T_{e}=p(\lambda_{d}i_{q} - \lambda_{q}i_{d})\\
T_{e}=p\frac{3}{2}(\lambda_{d}i_{q} - \lambda_{q}i_{d})\\
T_{e}=p\frac{3}{4}(\lambda_{d}i_{q} - \lambda_{q}i_{d})
$$
一番上の式は絶対変換になっていて、真ん中の式は相対変換が使われています。
上二つの式のpは極対数ですが、一番下の式はpが極数になっているので分母が4と解釈してます。
最後に
シミュレーションとかしてると、電圧や電流が実効値なのか、ピーク値なのか、 線間なのかなど、混乱しやすいところはポイント抑えとくとミスしずらいのかなと思います。 あとは、モータのトルク定数(誘起電圧定数)の単位や、変調率が何で定義されているかなども混乱しやすい点ですね。